「HPVワクチン=女子が子宮頸がん予防で打つもの」——このイメージはもう古い情報です。HPV(ヒトパピローマウイルス)は性的接触でうつる、男女共通のありふれたウイルスであり、男性にも尖圭コンジローマ、中咽頭がん、肛門がん・陰茎がんなどの病気を起こします。海外では男性への接種が広く行われており、日本でも男性の接種(任意接種)が可能です。
この記事では、男性がHPVワクチンを打つ意味、種類と回数・費用、接種を考えるべき人、よくある誤解を解説します。
HPVは男性にも病気を起こす

- 尖圭コンジローマ:性器・肛門周囲のイボ。原因の約9割がHPV6型・11型で、再発しやすく治療に手間がかかります(コンジローマの記事参照)
- 中咽頭がん:喉の奥のがんの一部はHPV(主に16型)が原因で、オーラルセックスを介した感染と関連します。男性に多いのが特徴です
- 肛門がん・陰茎がん:頻度は高くないものの、HPVが主要な原因です
- 感染の運び手になる:自分は無症状でも、パートナーの子宮頸がんリスクの原因ウイルスを運ぶ立場になり得ます
HPVは性経験のある人なら誰でも一度は感染するといわれるほどありふれたウイルスです。多くは免疫で排除されますが、一部が持続感染してイボやがんの種になります。ワクチンは「排除に失敗する不運」を最初から減らす手段です。
男性が接種するメリット|自分とパートナーの両方を守る
- 自分の病気の予防:4価・9価ワクチンはコンジローマの主因(6・11型)とがんの主因(16・18型など)をカバーし、海外のデータでは男性のコンジローマや関連がんの減少が示されています
- パートナーへの感染防止:集団として男性の接種が進んだ国では、女性側の感染・病変も減る「集団免疫」効果が確認されています。特定のパートナーを守る意味でも有効です
- コンドームで防ぎきれない部分を補う:HPVは皮膚接触でもうつるため、コンドームだけでは完全に防げません。ワクチンは数少ない「上流の対策」です
種類・回数・費用の目安
| 内容 | |
|---|---|
| ワクチンの種類 | 日本で男性が接種できるのは主に4価(ガーダシル)。9価(シルガード9)は国内では女性への適応が中心で、取り扱いは医療機関により異なります |
| 回数 | 原則3回(初回→2カ月後→6カ月後が目安) |
| 費用 | 男性は原則自費(任意接種)で、1回あたり1.5万〜3万円程度、3回で5万〜9万円程度が相場。一部自治体には男性への助成制度があります |
| 対象年齢 | 4価は9歳以上の男性に承認。若いほど(性交渉開始前ほど)効果的だが、成人後の接種にも意味はある |
接種を特に考えたい人

- 若い世代(10〜20代):感染機会が増える前の接種が最も効果的です
- 新しいパートナーとの関係が始まる人・パートナーが複数いる人:今後の感染機会が多いほどワクチンの価値は上がります
- コンジローマを経験した人:すでに感染した型は防げませんが、未感染の型の予防には意味があります。再発に悩む人ほど検討の価値があります
- パートナーの健康を守りたい人:相手の子宮頸がんリスクを下げる間接的な貢献になります
- 男性と性交渉のある男性:肛門がん・コンジローマのリスクの観点から、海外では特に推奨度が高い層です
よくある誤解の整理
- 「もう性経験があるから無意味」→誤り:すべての型に感染済みというケースはまれで、未感染の型を防ぐ効果は残ります
- 「ワクチンを打てば検査や予防は不要」→誤り:カバー外の型や既存の感染には無力です。コンドームと検査の習慣は引き続き必要です(検査頻度の記事参照)
- 「ワクチンでHPVが治る」→誤り:ワクチンは予防であって治療ではありません。今あるイボは治療が必要です
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接種までの実務フロー
- 取り扱い医療機関を探す:内科・泌尿器科・皮膚科・トラベルワクチン外来などで、男性へのHPVワクチン接種に対応しているか電話やサイトで確認します(取り扱いは施設差が大きい領域です)
- 自治体の助成を確認する:接種前の確認が必須です。接種後の申請では助成が受けられない制度が多いためです
- 3回のスケジュールを押さえる:初回の予約時に2回目(2カ月後)・3回目(6カ月後)の目安も手帳に入れておくと完遂率が上がります
- 体調の良い日に接種する:発熱時は延期になります。接種後は注射部位の痛みに備え、利き腕を避けるのが定番です
性感染症の予防全体の中では、ワクチンは「打てば終わり」の数少ない対策です。コンドームや検査(検査キットの記事参照)のような継続の努力が不要なぶん、始める手間だけかける価値があります。
この記事のまとめ
- HPVは男性にもコンジローマ・中咽頭がん・肛門がんなどを起こす共通のウイルス
- 男性の接種は自分の予防とパートナーへの感染防止の両方に意味がある
- 男性は任意接種(自費)で3回・総額5〜9万円程度。一部自治体に助成あり
- 性経験があっても未感染の型の予防効果は残る。若いほど効果的
- ワクチンは予防であり治療ではない。コンドーム・検査の習慣は継続を
よくある質問
Q. 何歳までなら打つ意味がありますか?
A. 一律の上限はありません。鍵は年齢そのものより「今後の感染機会」です。新しいパートナーとの出会いが今後もあり得るなら、30代・40代でも予防効果の期待は残ります。費用対効果を自分の生活に照らして判断してください。
Q. 副反応が心配です。
A. 最も多いのは注射部位の痛み・腫れで、数日でおさまるのが通常です。発熱・だるさが出ることもあります。重いアレルギー反応はまれですが、接種後の体調変化は接種した医療機関に相談してください。
Q. 3回も通うのが大変です。2回ではだめですか?
A. 成人男性の標準は3回接種です。途中で間隔が空いてしまった場合も、最初からやり直すのではなく残りを接種すればよいとされることが多いので、中断してもあきらめずに医療機関に相談してください。
Q. すでにコンジローマの治療中です。打つタイミングは?
A. 治療と接種は両立できます。今あるイボの治療を進めながら、未感染の型の予防としてワクチンを並行する形は合理的です。スケジュールは治療中の医療機関と相談してください。
Q. パートナー(女性)がワクチン済みなら、自分は不要ですか?
A. パートナーの接種はその人を守りますが、あなた自身の中咽頭がん・肛門がん・コンジローマのリスクはあなたの接種でしか下がりません。また将来のパートナーが接種済みとは限りません。「相手任せにしない予防」として考える価値があります。
Q. 自治体の助成はどう調べればいいですか?
A. 「お住まいの自治体名+HPVワクチン+男性+助成」で検索するか、自治体の予防接種担当窓口に問い合わせてください。男性への助成を行う自治体は近年増えており、数万円の負担差になるため確認の価値は大きいです。対象年齢や接種期限が設定されている制度もあるので、早めの確認が得です。制度は年度ごとに変わることもあります。

